近江神宮前駅から坂本駅へ。170円、9分で900年。1分100年、100円で500年を一気に下る。

ガイドで見ていた駅前のレンタルサイクルへ。坂本は回る範囲が広いので自転車を使うことにした。先年に奈良明日香村を訪れた際にクロスバイクレンタルで山間の遺跡を結構楽しく回れた体験から、今回もクロスタイプかMTBにしようと思っていたが、なんとあったのはママチャリだけ。管理人さん曰く、坂本は斜面ばかりで自転車で回る人は少ないのだそうだ。明日香村だって山間なのに、観光者の層が違うのか、それとも絶対人数の違いか。とりあえず内装3段があったので半日レンタル。


まずは西教寺へ。しょっぱなから上り坂で脚に来る。西教寺は明智家の菩提寺で明智一族や光秀公の妻
熙子の墓がある。特に法要の日ではないのに一族の五輪塔の前には線香と花が手向けられていた。まずは順に参拝。正面右から最後熙子の墓がある.なぜか際立って小さい。光秀公の最期をまたずに、55万石の太守の妻としてなくなった熙子はある意味幸せであったろう。境内をぶらっと一回りして次の目的地に。次はいよいよ松禅院だ。

松禅院、よほど詳細な地図でもなければ載っていない。なぜここに行きたかったかというと、ここには光秀公が寄贈したといわれる石灯籠があるからだ。なぜそれが見たかったかというと寄贈されたのが慶長20年、1615年だ。お分かりであろう、光秀公が小栗栖で最期を遂げたのが1582年。この寄贈者光秀なる人物が全くの別人か、何者かの偽装でない限り、日向守光秀公は山崎の敗戦より生き延びていたことになるわけだ。つまり世間一般に言われている「光秀=天海」の物証のひとつになる。


長い谷間の上り道を松禅院に向かう。自転車を借りるとき、観光案内所も兼ねる
管理人さんに松禅院について聞いてみた。管理人さんはしばし考えた後、「飯室谷のところかな、あそこまで自転車は結構きついよ。それにあそこは普段閉まっていて入れたかなぁ」という感じだった。確かにマニアックな雑誌やブログにしか出てこないので、一般人がほいほい見にいけないところのような気はしていたが、ま、だめもとで行ってみようというところだった。長く細い山道で、さすがにいい加減くたびれたところにそれは突然現れた。

飯室不動堂。中世の昔なら本当に山奥の修験場みたいなところだ。しかし、さっきの情報と少し違う。線香の煙のようなものがたちこめ、大勢の人の気配がある。車も結構止めてありちょっとした観光スポットのような感じだ。目指す松禅院はこの奥にあるらしい。最期の急坂を自転車を押して登り、小さい広場に駐輪する。さて石灯籠はどこだろう。まずは目の前の鳥居(なぜお寺に鳥居?)をくぐり晴天の真っ昼間なのに薄暗く長い回廊を登る。一番奥になんとも古ぼけたちょっと不気味な廟のようなものがある。でもそれらしき石灯篭はない。そのまま戻っては失礼なのでとりあえず拝礼して戻る。(廟をよく見なかったが後に調べたら比叡山四大魔所の一つといわれる慈忍和尚廟だった。拝礼しておいてよかった。)

再度地図をみると、どうやら隣の仕切られたところが松禅院らしい。表に回ってみると門が開いていて読経が流れている。何か法要をしているようだ。門前をうろうろしていると人が入っていったのでついて入ってみた。その人は檀家らしく、玄関で挨拶をして坊の中に入っていった。玄関にはまだ住職さんらしき人がいたのですかさず捉まえてずばり聞いてみた。住職さん曰く、確かにここに光秀公が慶長20年に寄贈したといわれる石灯篭がある。元々慈忍和尚廟にあったものを保存のためにここに引き取った。しかし傷みがひどく一般公開にすると倒壊する恐れがあるのでご案内はできない。とのことだった。


あるといわれればやはり見たいのが人情だ。見るだけでもと何度か頼んだがだめであった。これ以上無理強いすると礼を逸すると思い、丁寧にお礼をし帰ろうとしたとき、逆に
住職さんが声をかけてくれた。お教えはできないが、せっかく着たのだから境内を自由に見て回っていいよ、と

あきらめた後なので面食らったが、せっかくのご好意に甘えることにした。境内をぶらぶらと歩いているうちに奥のほうに石灯篭があった。以前写真で見たものに酷似している。これか!このどこかに例の“慶長二十年二月十七日 奉寄進願主 光秀”と彫られていれば……。

しかし薄暗く苔むした石灯籠では目の前にしてくっついて見ないとわからない。ぼうっと周囲の景色と溶け込む石灯籠を眺めているうちに、ふと何かさっぱりした気分になった。これはこのままでいい。確認しないまま帰ることにした。目的は十分果たした。ご住職に再度お礼をし、飯室谷をあとにする。自転車で苦労して登った坂を下る痛快さは車やバイクでは絶対に味わえないものだ。日はまだある。ニュータウン中の並木道を湖畔に向かって駆け下りる。

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