視界の中に何やら黒いものが居座り続けている。
最初は本当に虫かと思ったが、すぐに違うことがわかった。虫ではなく、まつ毛が引っ付いたのだと思った。
しかしそれとも違うことに気付いた。目薬をつけても取れない。絶えずそこにいて、視線をそらしても図々しくついてくる。

「緑内障です。進行はしていないのですぐに影響は出ませんが、経過観察が必要です。」と診断されて2年。急に進行が始まったのかと不安になって、掛かりつけの眼科に緑内障検査を申し込む。
「緑内障検査は予約が数か月先になるけど、それは違う症状だと思うので、すぐ診察に来てください。」ということで眼科に行く。

眼科・内科・整形と最近入り浸っているが、検査やリハビリの通院は結構楽しい。年寄りが病院に入浸る。「常連のおばあちゃんが来ないのは、きょうは具合が悪いからだ」などという落語のような待合室。
小一時間ほど待って検査をする。視力・眼底・眼圧‥‥ETC。30分くらい検査が続く。
そして診断。

「これは『飛蚊症』です。普通の老化現象としておこるものです。」
『飛蚊症』??「かっ飛び性」ではない。最近燃料計しか見ないので飛ばさない。

眼球の硝子体が、老化により縮んで網膜から剥がれたものが、眼球の中にたまってしまうことを「後部硝子体剥離(こうぶしょうしたいはくり‥‥ひらがなにすると何とも恐ろしい)」といい、これが飛蚊症の原因となるとのことである。

「ときたま、網膜裂孔や網膜剥離により発症することがあり、この場合はきちんと処置しないと危険なので検査に来てもらいましたが、その心配はないようですね。これは特に薬等はないので、はがれたかすが外に出て黒い線が消えることもありますが、自然に慣れて気にならなくなるのを待つしかありません。自然に視野から消えていったらめでたく老化の仲間入りです。」


せんせー、ショッキングなことを何気なく笑顔でいわないでくれ‥‥


その後、もう約一月近くこの黒いものは親父の視線とともにいる。最近たまに見失うようになった。「お〜い。いなくなっちまったのかよぅ」と思うと、また突然出てきて居座ったりしている。

こいつが視界から気になくなったら老化現象入門編クリアということか。だったらしばらくは、うざとく付き合ってほしいな。


血圧・心臓・五十肩、ぎっくり腰にそして目。これから死ぬまでこの気の抜けない友人たちとシェアハウスしなければいけないわけだ。『華麗』に年をとりたいものだが、現実は「加齢」に年をとっていくのである。


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村
 にほんブログ村  その他生活ブログへ
にほんブログ村