予てより観たかった映画が封切りになった。『海難1890』。『征服1453』よりトルコファンになったおやじにとっては日土合作で、日本とトルコの友好の礎となった題材はぜひ見たかった。
http://www.kainan1890.jp/index.html
https://www.youtube.com/watch?v=Iadt_c4pBwIこの映画を知った頃は、てっきり秋月達郎の『海の翼』の映画化かと思っていたが、主人公や脚色も違う別作品だった。
監督は田中光敏。映画ファンではないから監督さんにはあまりこだわらないのだが、『火天の城』はおやじの感動した映画の一つである。
内野聖陽はじめ配役陣も錚錚たる面々であるし、トルコ側の描写も重厚で手を抜いてはいない。
さすがに超大作とは言えないが、世界中にアピールできる作品として東映が力を注ぎ込んだ大作である。
日本のキャストは他の映画やドラマでも見ているので、トルコ側のキャストに興味があった。トルコ側主演のケナンエジェ熱演もさる事ながら、トレーラーではあまり出てこなかったが、このふたりにが印象に残った。軍楽隊の生存者の水兵。毅然とした役柄なんだけど、どこともなくコミカルさと優しさがにじみ出てくるいいキャラだった
もうひとりがテヘラン空港で真っ先にトルコ航空のカウンターに詰め寄っていたおやじ。トレーラーでトルコの子供が、日本の子供の手を取りトルコの人々の拍手と激励の中、カウンターへ歩いていくシーンはこの映画の最大のハイライトだが、その自分の息子に日本人を導くように諭すのがこのオヤジである。最後に自分たちは車で帰るといって空港を出ていく。おやじの鑑である。
オザル首相が素晴らしい。日本沈没で丹波哲郎演じた山本総理同様、どこの国の首脳より立派に見えた(山本総理はもちろん架空の人物だが)。日本側から見ると2カットくらいしか出てこないが最後のカットのセリフが本当に素晴らしい。
日本ではこのような決断をする首相はいないし、それに国民すべてが応えるということもないだろう。
映像で は、実際の事故現場である串本の風景がとても印象的だが、トルコ側の舞台でもあるイスタンブールの街をバックにした『エルトゥールル号』の美しさが特に印 象的である。CG技術にはいつも目を見晴らせられる。DC-10がCGなのはむしろ意外。てっきり本物を持ち出したのかと思っていた。
泣いた泣いた。『アナ雪』より泣いた。『TITANIC』より泣いた。『サンダ対ガイラ』?より泣いた。ストーリーや展開はわかっていたのだが、やはり実際のスクリーンで観ると止めどもなく涙(と鼻水‥‥)が出てしまう。トレーラーで泣けてしまうくらいだから、タオルハンカチ持って行って良かった。惜しむらくは串本編とテヘラン編との結びつきに『海の翼』のようないくつかの因縁があって欲しかったと思うことである。
上映では是非ケバブサンドを販売していただきたいと書いたが、丸の内では本当に上映に合わせて『ケバブ』を販売したそうだ。
とても見ごたえのある作品なのに、上映初日に観客が満席の1割にも満たないプライベート上映会状態だった。地元ではすごい人気のようだが、ここの劇場だけなのか?。
同じ日『杉原千畝』も封切りになっていたけど、これでは東映が「大惨事」になってしまう。
ディスカウントの中古DVD派が言うのもなんだが、ぜひ映画館に出向いて見ていただきたい。報恩とか友情とか言っても、日本で閑古鳥が鳴いていてはトルコの人たちに顔向けができない。
日土両首脳の折り紙つき作品。色々近隣諸国と問題を抱えている両国だが、国際関係とは関係なく文句なく感動できる映画だ。今度はぜひ『山田寅次郎』を題材にした映画を作ってもらいたいものである。