邦題『タイタニックを引き揚げろ』。著者はクライブ・カッスラー。古本で入手し、読んでいるうちにタイタニックへの興味が呼び起こされた。

1980年暮れに封切られた正月映画『レイズ ザ タイタニック』の原作本である。当時は『S・W帝国の逆襲火の鳥2772』なんかやってたし、当時も大作の印象はなかったが、その年の洋画としては結構いい興行成績を上げたらしい。圧巻のタイタニックの海面浮上のシーンは見事だったが、タイタニック船上での米ソの駆け引きは、国家の命運とはかけ離れた茶番だった。当時の超大作スペクタクルと比べると地味さとチープさを否めなかった画像を補って余りあったような、ジョン・バリーのダイナミックで美しいサウンドがとても印象的だった。(当時は音楽だけで感動していたみたいだった‥‥)

タイタニックを引き揚げろタイタニックを題材とした映画では、97年の『TITANIC』が有名だろう。来年は事故100年に当たり、TITANIC』のリメイク版が出るという話もある。

残念ながら親父はこの映画は見ていない。勿論、デカプリオとケイト・ウィンスレットの船の舳先でのあのシーンを、その辺の遊覧船の先っぽでカミサンと演じるようなまねはしてはいない。親父にとって印象に残るタイタニック映画はテレビ放映の『忘れえぬ夜』と、この『レイズ ザ タイタニック』である。

映画『レイズ ザ タイタニック』は、今回読んだ原作と比べると、かなり脚色されたり省略されたりしていることがわかった。まあ、松本清張原作のミステリーものを映像化したようなものだろうか。‥‥『砂の器』なんかも原作とはかなり違っていたが風景描写と音楽はよかったよなぁ‥‥余談。

映画では最も山場となる、タイタニックの海底捜索と浮上作戦、浮上シーンは小説ではほとんど重きを成していない。むしろそこに行き着くまでの経緯と、情報戦とも言える米ソの鬩ぎ合いが小説の読みどころである。

もし、小説に忠実に映画化するのならば、冒頭には最も金のかかる、序々に沈み行くタイタニックとパニックに陥る人々の風景から始まるべきであるし、映画ではミニチュア・水槽撮影丸出しのタイタニックが海中を浮上していくシーンはない方がよかったし、逆に浮上後の台風遭遇と米ソの駆引きと特殊部隊の突入シーンなどはぜひ入れてもらいたい場面だった。

但し、シーグラムとピットの絡みは映画の方がストレスを感じないし、小説の国家戦略の完遂と破滅的結末に対して、映画では国益に反して人間的信念を貫くジーン・シーグラムの対照的コントラストも、改めて比べると映画の方がドラマチックで小説的だったと言える。まあビザニウムの争奪戦があまりに凄惨になったら、最後のシーグラムの『NO』という言葉を導けなくなってしまうからだろうか‥‥

主役ともいえるタイタニック号は、今から100年前に当時世界最大の豪華客船、ホワイトスター海運のRMS英国籍の商船の頭文字)オリンピック号の2番船(3番船はブリタニック号)として建造された船で、立てかけたらサンシャイン60よりも高い(でもランドマークにはちょっと負ける)。幼いころの船やのりものの図鑑で紹介されているのはほとんどオリンピック号だった(1番船だから当然ではあるが、オリンピックという船名が当時東京オリンピックとクロスオーバーしていたから良く記憶している)。

総船重46,000トン(総排水量は66,000トン)、全長270m、最大幅28m、全高は52m、喫水線が約10mとすると、水面上42mの高さとなる。

ただし、資料によると高さ52mは煙突の最上部とされている。事実とすると、写真から推測する前後のマスト高は海面上有に60m〜65mはあるように見える。RMSタイタニック

映画でタイタニックが貿易センタービルをバックにブルックリン橋を通過するシーンは印象的な部分だったが、あのマストの高さで橋をくぐれたのかは不明である。(マストが残っている自体“?”なのだが‥‥)

叶うなら、あの優美な船体が東京のウォーターフロントを黒煙を長引かせて滑って行く姿が見たいものだ(現代なら合成で可能だが‥‥)近年の豪華クルーザーがむしろグロテスクに肥満化する中で、まさにTITANICあのシーンが映える船本来の美しさを象徴する時代の船の一つである。

‥‥でも、やはり東京のレインボーブリッジもあのマストが突っかかってしまうのだろう‥‥。

その後の海底調査で発見されたタイタニックは、船体が3つに割れて、保存状態も映画よりかなり悪いことが判明。遺品等はいくつも回収されているが、残念ながらあの美しい巨体がそのまま水面に浮上する映画のあのシーンを現実に見ることは永遠になさそうである。

タイタニックは沈められた余談ながら、こんな本も買ってしまった。ロマン冒険小説から現実世界に引き戻されてしまう内容。

いまさらという訳ではない。来年は前記のタイタニック海難事故100年となり、またタイタニックで盛り上がりそうなので、ちょっと先取り気分で知識を深めておくのもよい。


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